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No. 28 祝:小山明彦新教授 〜“輝いた目と潤んだ眼”

 この度、2017年12月1日付で、当教室小山明彦先生が、公立大学法人福島県立医科大学医学部形成外科学講座教授に就任いたしました。

 私が主任教授として教室を主宰してから、筑波大学形成外科関堂 充教授に続く、2人目の教授誕生です。

 北海道大学医学部形成外科学教室にて、小山明彦先生と共に過ごした日々を振り返りますと、教室ホームページや同門会・教室年報を共に作り上げ、バスケットボール大会での初優勝、そしてゴルフ、ワイン、レストラン等、仕事だけに留まらず、とても多くの楽しい時間を共有して来ました。

 彼の教授就任に際し、今、私にとって、2つの忘れられない瞬間が思い起こされます。

 まずは、2007年11月に、彼と舟山恵美先生が留学していたフランス・パリ大学を表敬訪問した際、ブルゴーニュ地方のロマネ・コンティワイン畑を一緒に観光に行くTGV車中にての出来事です。彼と面談し、“北大形成外科の顎顔面外科を今後10年間、君に任せたい。好きなようにやってくれ。”と私が告げた時のことです。彼は、私の目をしっかりと見つめて、“わかりました、お任せ下さい。”と即答しました。その時の、彼の目はとても輝いていました。いみじくも、その時から丁度10年を経て、彼は北大を巣立つのです。

 次に、彼が今回の教授選に出ることを相談に来た時の事です。母校である福島医大の形成外科教授になる事は、震災からの復興を目指す故郷への恩返しとなります。また、医療教育人として、医育機関の教授になる事は誉であり、大きな目標でもあります。そのチャンスが巡って来たのです。一方、彼のメインワークである頭蓋顎顔面外科診療は、歯学部、耳鼻科、脳外科等が参加するチーム医療が必須であり、彼は北海道大学病院で、Cranio-Maxillo-Facial Unitを一生懸命に育て上げて来ました。その大変な努力を私は知っています。彼の今後の臨床研究を考えるなら、このまま北大で仕事をさらに発展させ、世界に発信して行く選択肢もあり、一緒に相談する機会を重ねて来ました。彼は大いに悩んだ事と思います。2017年2月、教授室に彼が来て、今回の決断を私に伝えに来た時の彼の眼は、少しばかり涙で潤んでいました。そして、彼は男の本懐を遂げたのです。

 教授というものは、教室内で“裸の王様”になる危険性が、いつも潜んでいます。そのような時に、小山明彦先生は、私の部屋を訪れてきて、教室内で今何が起こっているのか、若い教室員は何を考えているのかを、言葉を選びながら、私にしっかりと伝えてくれました。本当に感謝しております。

 最後に、今の私の心境を申し上げます。25年前、北大形成外科が、類稀なる資質を備えた小山明彦という形成外科を志す医学徒を預かり、多くの同門会員、教室員の協力の下、素晴らしい形成外科医、指導者となって、故郷の福島にお返しするという感が極まります。そして、同時に、これから、小山明彦教授と共に日本の形成外科をさらに発展させて行くという、もう一つの物語りが始まる高揚感に満ちています。

 心より“おめでとう”と言わせて下さい。

     小山明彦先生に、そして、彼を支えてきた舟山恵美先生に!

2017年12月1日
山本有平

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