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No. 21 主任教授より 2014

 

 我が国における専門医制度は、現在大きな岐路を迎えております。厚生労働省や日本専門医制評価・認定機構が進めている、subspecialtyを有する基本領域専門医の今後の在り方です。例えば、外科医の場合、基本領域となる日本外科学会認定専門医を取得後、若い外科医達は消化器外科、呼吸器外科、あるいは心臓血管外科等の専門領域に進み、さらに数年の研鑽を積むことになります。形成外科においても、若い形成外科医達が基本領域の日本形成外科学会認定専門医を取得後に、更なる研鑽を積む場となる教育研修制度を、日形会が、そして先輩となる我々の世代がしっかりと提供することが極めて重要であります。それが構築できなければ、5年後、10年後に“形成外科の質”の低下を招く危険性があります。それでは、どのような領域の教育研修制度が必要なのでしょうか? その答えは、日形会が行っている疾患data-base報告が道標となります。ここ数年において、皮膚腫瘍外科、創傷外科、骨折や先・後天性障害を含めた顔面外科の領域の疾患に対する診療が、日常の形成外科診療の約90%を占めているのが現状です。そのため、これらの領域に関した確固たる教育研修制度を構築し、将来における“形成外科の質”の担保を目指した専門医を育成していかなければなりません。この高邁な計画に基づき、2010年より、皮膚腫瘍外科指導専門医、創傷外科専門医、頭蓋顎顔面外科専門医の各制度がスタートしました。2013年4月1日現在、日形会から2221名の形成外科専門医が認定されており、その中で、皮膚腫瘍外科指導専門医は612名、創傷外科専門医は322名、頭蓋顎顔面外科専門医は107名を数えます。今後は、これらの2階建ての専門医の数をさらに増やし、“形成外科の質”の向上を目指した教育研修制度を統括的に見直して、その先にある日形会指導医制度へとさらに発展させていくことに尽力していきたく存じます。

 さて、昨年の当教室の主な活動として、8月に第8回瘢痕・ケロイド治療研究会を主催いたしました。全国から約100名の参加者を賜り、大学内の教室員を中心として運営し、盛会に終えることができました。本研究会代表である日本医科大学百束教授を始め、関係各位のご協力に心から感謝申し上げます。

 昨年、当教室から意義深いプロモーションがございました。スタッフである林 利彦先生が、9月1日より北海道大学大学院歯学研究科准教授に昇任されました。形成外科は、口腔腫瘍切除後の再建や唇顎口蓋裂治療など、歯科診療と多くのチーム医療を行っており、DDS&MDのダブルタイトルを持つ彼には、今後更なる歯科と医科の架け橋となる役割が期待されます。同時に、北海道大学病院客員臨床准教授にも採用され、腫瘍、再建、ケロイドを中心とした形成外科診療ならびに研究も、当教室スタッフの一員として継続していきます。この人事に応じて、村尾尚規先生が北海道大学病院助教に採用され、当教室の新スタッフとなりました。大学院での研究歴や人脈を活かして、創傷治癒を筆頭とした多分野においての基礎的及び臨床的研究を大いに発展させて下さい。さて、大学院におきましては、村尾先生と蕨 雄大先生が卒業され、博士(医学)学位を取得しました。日本形成外科学会認定専門医は、新たに、高橋紀久子先生、安居 剛先生、前田 拓先生、野崎 愛先生の計4名が取得しました。これから、各位の活躍を心から期待しています。

2014年1月1日 山本有平

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