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No. 20 主任教授より 2013

 

 形成外科は、あざや熱傷痕に対する植皮術さらに兎唇や耳変形に対する形成術を行う外科医として誕生し、その後、皮弁そしてマイクロサージャリーを駆使する再建外科としてのidentityを確立してきました。そして、今、誕生後半世紀以上を経て、将来において形成外科が基本領域の診療科としてsurviveしていくために一つの岐路を迎えています。それが、2階建ての専門医制度、 つまり“subspecialty”の構築です。日本形成外科学会は、他学会に先駆けて、疾患data-base制度を稼働させ、2010年代前半、我が国において形成外科医は、どのような疾患を主として治療する診療科であるのかが判明しました。ご存知のように、皮膚腫瘍外科そして創傷外科の領域が、日常診療において約75%を占めており、その2つの分野が、現在の形成外科医が日本国民の厚生福祉医療において、“量的”に最も貢献していくべき道標になっています。言い換えますと、我が国において基本領域の診療科として存在する形成外科医にとって、2つの“major な subspecialty”は、皮膚腫瘍外科と創傷外科であります。その屋台骨があってこそ、その上に、先達の形成外科医達がこれまで汗と涙で培ってきた匠の技術を要する、“頭蓋顎顔面外科”、“微小血管再建外科”、そして“美容外科”といった、“distinctive な subspecialty”がその価値を発揮していくと考えます。そのような意味で、この2年間に、我が北大形成外科が、日本創傷外科学会そして日本皮膚悪性腫瘍学会の学術集会・大会を主催する機会を得た意義は、極めて大きく、ご支援、ご協力を賜った方々に心より感謝を申し上げたいと存じます。この幸運な、素晴らしい経験を糧として、これからは、形成外科の未来に向けた“subspecialty”を、さらなる高い極みに推していけるように、北大形成外科は尽力して行きたいと思います。次なる歩みとしては、日本美容外科学会や日本頭蓋顎顔面外科学会の改革、そして日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会への参画等が挙げられます。これからのneo voyageを前にして、さらに身が引き締まる思いであります。

 さて、これからは、北大形成外科の今年の主な活動をご報告します。前述しましたように、6月に第28回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会を主催いたしました。日本皮膚悪性腫瘍学会の設立以来、初めて形成外科学分野が会長の任を賜った、記念すべき学会であります。メインテーマを「The Cutting Edge in Skin Cancer —皮膚がん治療最先端—」として、皮膚悪性腫瘍およびリンフォーマの集学的治療を中心とした多くの新企画、幅広い分野からの教育的プログラムを設けました。“Cutting Edge”という言葉には、その意味通り“先端の診療・研究”と共に、皮膚腫瘍治療において極めて重要である外科的切除の幹となる“メスの刃先”への熱い思いを込めました。学術大会では、計 333 の演題が発表され、招待者を含む総参加者は750名になりました。会期中には、“形成外科を代表して、多くの皮膚科の先生を迎える〜運営に失敗は許されない!”という緊張感が高揚し、会長挨拶において初めて流暢に口が回らなくなり、また最終日には、私の体調を心配してくれた教室員達の計らいで、会場ホテルの一室にて点滴をしてもらいました。このような生涯思い出に残る経験をさせて頂き、改めて、教室員、同門会員の皆様のご協力に感謝申し上げるとともに、本学会の開催にあたりご助言、ご指導、そしてご協力を賜りました全ての方々に心よりお礼を申し上げます。

 さて、今年も大学スタッフに大きな移動はありませんでしたが、その中で、高橋紀久子先生が北海道大学病院の医療人養成・地域医療支援プロジェクトにより、3年任期付き助教に採用されました。国内留学に関しては、大芦孝平先生が大学院を卒業して博士(医学)学位を取得され、4月より2年間の予定で、国立がん研究センター皮膚腫瘍科にて研鑽を積んでいます。どれだけ、スケールアップして帰学されるか楽しみです。日本形成外科学会認定専門医は、岩嵜大輔先生、塩谷隆太先生、藤田宗純先生、山尾 健先生の計4名が取得しました。これから、本教室の成長エンジンとして活躍されることを期待しています。スタッフ、院生を中心とした、ここ数年にわたる研究活動が結実し、2012年は当教室より多くの英文論文が発表されました。とても誇らしいことです。このmotivationを堅持し、さらなる邁進を目指して行きたく存じます。

 最後になりますが、昨年の暮れに、素晴らしいニュースが届きました。12月16日に行われた第46回衆院選におきまして、当教室に長年籍を置いていた、同門会員の勝沼栄明先生が見事当選されました。政治家を志して3年余にて、男子の本懐を果たすことができ、心より祝福申し上げます。良き政治活動に邁進されることを祈念し、大きなエールを送りたいと存じます。

2013年1月1日 山本有平

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