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No. 13 "道標" 〜形成外科

 日本に形成外科が登場してから半世紀以上を過ぎているにもかかわらず、一般市民の中には、 “形成外科って何?”と問われる方が現在でも多くおられます。形成外科医が日々診療を行っている疾患分野を、国民全体にもっとわかりやすく知っていただくことが、これからの形成外科にとって極めて重要な命題です。そして、それが日本国民全体の医療レベルの向上、質の高い治療を受ける権利の向上に繋がっていくことと信じています。そのために、まず日常診療において最も患者数の多い疾患分野を対象とし、形成外科専門医の subspecialty として2階建ての指導医制度と診療ガイドライン作成という将来計画が始まりました。最初に取り上げた領域は、「創傷」、「頭蓋顎顔面外科〜顔面骨骨折」、「皮膚腫瘍」の3つです。「創傷」においては、日本創傷外科学会を発足させ、それが母体となって創傷外科指導医を認定していき、「頭蓋顎顔面外科〜顔面骨骨折」においては、日本頭蓋顎顔面外科学会が基盤となり、顔面の損傷や発育不全を扱う頭蓋顎顔面外科指導医を認定していき、「皮膚腫瘍」においては、日本形成外科学会の中に特定領域指導医制度を立ち上げ、皮膚腫瘍外科指導医を認定していく構想です。将来像として、全国の病院の診療科案内コーナーでは、

"形成外科専門医"

〜創傷外科指導医;擦り傷、切り傷、やけど、床ずれ、傷跡を治します〜
〜頭蓋顎顔面外科指導医;顔の怪我、骨折、変形を治します〜
〜皮膚腫瘍外科指導医;皮膚のできものやあざを治します〜

という掲示がされ、また外来には各疾患の診療ガイドラインが備えられることにより、患者さんの形成外科に対する理解が大いに深まることになるでしょう。形成外科に関連した複数の学会を横断的に包括するこのミッションは、日本形成外科学会が基本領域の学会として認定されている現状を支えていくものであり、今後は、唇顎口蓋裂、頭頸部再建、乳房再建、眼瞼下垂、美容外科などの疾患分野においても推進させていくことが望まれます。

 最近は学会における使命感や責任感の重さを日々痛感するようになりました。多くの優れた委員の仲間とともに、日形会理事1期目は、専門医試験問題作成委員長として、問題集の大改訂を施行し、日形会理事2期目となった今年は、新しく編成された渉外・広報委員長として、日形会ホームページのリニューアルに挑戦しております。また、日形会専門医統括会議のメンバーとして、日形会特定領域指導医制度の発足に参加し、最初の事業として皮膚腫瘍外科指導医認定委員長としての基盤業務を仰せつかっております。さらに、日本創傷外科学会では、学会会誌「創傷」の編集委員長として、形成外科領域では初めての試みとなる電子ジャーナルとして発刊への準備に奔走しています。これからも、形成外科学の発展のために先輩、同輩、後輩の多くの方々の御指導、御協力を賜れば幸甚です。

2010年1月22日
山本有平

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