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No. 12 主任教授より 2010

 時は移ろい過ぎます。本教室の創成にあたり、初代助教授そして同門会会長としてご尽力された浜本淳二先生が、2009年8月7日に享年77歳にてご逝去されました。私も研修医の時代に、函館中央病院にて大変お世話になった大先輩です。心よりご冥福をお祈りいたします。

 この度、本教室の皮膚腫瘍に関する基礎及び臨床研究のリーダーであった堤田 新先生が、埼玉医科大学国際医療センターの皮膚腫瘍科講師として赴任されました。これまで彼と私は、皮膚腫瘍の治療に特化した形成外科医の必要性について多くのことを語らい合ってきました。その過程で、彼は日本人として初めてシドニー大学メラノーマユニットへの留学を果たし、そして日本から多くの皮膚悪性腫瘍領域における英文論文を発信してきました。このような国際的な活躍が評判となり、また日本皮膚悪性腫瘍学会での精力的な活動による幅広い人脈もあって、今回の割愛に至りました。これは、彼の皮膚腫瘍外科医としての夢の実現に向けた第1歩です。将来に向けて、埼玉医大皮膚腫瘍科と北大形成外科が協力し、新たな皮膚腫瘍治療法の開発、そして全国からの多くの若い皮膚腫瘍外科医の育成を行う“梁山泊”となることを目指して共に頑張っていきたいと思います。後継の新スタッフとして、林 利彦助教が加わりました。大いに頑張ってくれることを期待しております。

 2009年も、教室員は海外に勇躍しキャリアアップに邁進しています。齋藤 亮医師と齋藤 典子医師がイタリア・ミラノのヨーロッパがんセンター(IEO: Instituto Europeo di Oncologia )頭頚科・形成外科に所属し、Chiesa教授、Calabrese助教授もとで研鑽を重ねています。来年には帰学し、北大形成外科の頭頚部再建、乳房再建に新たな風を吹かしてくれることでしょう。さらに、内山英祐医師が田仲北野田病院血管外科に国内留学し、近年増加している下肢・足潰瘍に対するdistal bypass手技の習熟を目指しています。中村隆先生に師事し、形成外科の新しい治療分野の開拓に向けて精進して下さい。

 私が教室を主宰するにあたり、いくつかの将来計画を立てました。そのうちの一つに、大学病院における美容外科診療の運営、自由診療部門の設立があります。いろいろな準備を進め、ようやく2009年5月13日より、北海道大学病院にて整容・美容外科診療を開始いたしました。早いもので、私が教授・診療科長に就任してから5年を要しました。また、新冨芳尚最高顧問が蘇春堂にて美容外科診療を開始されてから、四半世紀を経た25年目という記念の年でもあります。感慨深いものがあります。整容・美容外科開設までの経緯や詳細につきましては、日本形成外科学会学術集会のセミナーや各地の講演会にても、「北海道大学における整容・美容外科診療〜大学病院の果たす役割」として皆様にご報告して行きたく存じます。

 "教育"に関しても、これまで抱いていた目標の一つが叶いました。それは、皮膚腫瘍に関連した教科書の執筆・編集です。同門の皆様をはじめ、全国から多くの分担執筆者のご協力を頂き、2009年4月22日に、文光堂から形成外科診療プラクティスシリーズ「形成外科医に必要な皮膚腫瘍の診断と治療」を刊行いたしました。本書は、形成外科の診療分野および臨床研究において、極めて大きな比重を占めている皮膚腫瘍学の集大成の一つとして結実したものです。これまでご尽力されてきた先達たちに心より感謝申し上げて、本書を捧げたいと存じます。

2010年1月1日
山本有平

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