No. 9 主任教授より 2008 |
皆様にご報告したい昨年の出来事があります。4月に杉原平樹名誉会員が日本形成外科学会理事長の任を無事に終えられ、学会の名誉会員に推戴されました。さらに、10月には新冨芳尚会長が第30回日本美容外科学会を札幌にて開催され、学術的に非常に高い評価を得て大成功を収めました。教室員一同、この素晴らしい学会の運営に協力することができ大変誇りに思っております。そして、12月の同門会総会では、吉田哲憲副会長が、新冨芳尚会長よりバトンタッチを受けて新会長に就任され、新しい体制がスタートしようとしています。私自身も、当大学院を卒業され、現在はフダン大学(中国・上海)形成外科教授であるQi先生の依頼を受け、8月に開催された大学附属病院である中山医院開設70周年記念大会にて特別講演を行い、客員教授に任命されました。一方、若い力である新しい教室員は、昨年の11名の次年度で懸念されましたが、幸いにも現在5名の初期研修医が私のもとを訪れ、形成外科研修を開始し順調に経過しております。 私が掲げる目標の一つに、教室員のキャリアアップ〜国内外留学があります。昨年も、3名の教室員が海外に、1名の教室員が国内に飛翔しております。フランス・パリ大学附属サンルイ病院のServant教授(フランス形成外科学会における重鎮)のもとで舟山恵美医師が、パリ大学附属ネッカー病院のArnaud先生(頭蓋顎顔面外科領域において高名なTessier教授〜Marchac先生の後継者)のもとで小山明彦医師が研修を行っています。さらに、堀内勝己医師はアメリカ・アラバマ州立大学のVasconez教授に師事して、形成再建外科のup dateについて研修を始めています。国内においても、有数の再建手術症例数を誇る癌研有明病院形成外科にて、齋藤 亮医師が研鑽を重ねています。彼らの精力的な活動は大変頼もしく、これからの活躍が期待されます。 さて、振り返りますと私にとって2007年は “広報の1年”と言えます。形成外科のスポークスマンとして、多方面において疾走してきた感があります。学際的には、消化器外科分野、耳鼻咽喉科分野、整形外科分野等の他領域の全国学会において、外科手術の基本である創閉鎖からbrand newな神経再建法の開発におよぶ形成外科学の多様性を伝えてきました。市民に対しては、札幌三越デパートで開かれた第30回日本美容外科学会総会・市民公開講座や函館中部高校で開かれた「北大セミナー in 函館」を担当し、形成外科診療の素晴らしさについてお話しする機会を得ました。メディアを通じた広報においても、今年は北海道新聞から数回取材を受け、リンパ浮腫、眼瞼下垂、乳房再建の最新の治療についての記事やコメントが掲載され、大きな反響がありました。そして、年末からは、念願であった形成外科を紹介する医療記事の連載が開始します。現在まだ、道内地方におきましては、形成外科を知らないために、適切な治療を受けることができず苦しんでいる方々が多くいると思います。私はかねてより、そのような患者さんに、形成外科で治せるいろいろな病気や怪我を広く知ってもらうために、形成外科全体を理解してもらう連載記事の必要性を考えていました。この度、北海道新聞編集部のご理解を得て、毎週1回、計10回の連載を担当します。不安もありますが、形成外科地域医療の充実・発展にこの記事が少しでも役に立つよう、誠心誠意頑張りたいと思います。 教育におきましても、医学生に形成外科学を理解してもらうことは非常に重要なことと考えますが、残念ながら、現在全国の医育機関・医学部には、形成外科学講座はまだ約半数しかありません。「北海道大学医学部基本臨床コース・形成外科学」を私が担当して3年目を過ぎました。形成外科という学問・診療分野を、自分自身の言葉で責任をもって、医学生に正しく伝えたいと思い、パートナー教員と共に90分の講義、計8回全てを行っています。また、形成外科研修医に対しても、研修医教育セミナーに加えて、今年はPRS residency file、手術手技Movie Library等のプログラムを設立し、その充実に努めました。詳細については、年報内をご覧下さい。これらの教育活動が成果を挙げるには時間を要すると思いますが、必ずや近い将来、太い幹をなし大輪の花を咲かせることを心から信じています。 2008年1月1日 |
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