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No. 6 これからの抱負と展望:診療

 最後に、私の“診療”に関するこれからの抱負と展望について述べます。

 本教室は素晴らしい歴史と伝統を有し、これまでに120名を越える同門の形成外科医師を輩出しており、北海道地区はもとより、国内の形成外科学分野において、燦然と輝く業績を積み上げてきました。これまでの多くの先輩方の御尽力により、診療分野は、外傷(熱傷、労働災害、交通事故、顔面骨骨折、褥瘡等)、先天性形態発育不全(唇顎口蓋裂、小耳症、多指症等)、皮膚軟部組織腫瘍(あざ、母斑、血管腫、皮膚癌等)、 美容(眼瞼部、乳房等)、 悪性腫瘍切除後再建外科(頭頚部再建、乳房再建、顔面神経再建等)、頭蓋顎顔面外科(頭蓋顎骨発育不全等)と、形成外科学分野全体を網羅しており、全国に於いても類をみません。私は、道内外関連病院との連携・協力を深め、この多岐にわたる診療分野のこれまで以上の発展を目指し、特に以下をキーワードとして、教室員と共に誠心誠意取り組んでいきたいと考えています。

1. 機能的再建と整容的改善の融合

 形成外科学は、外科治療学分野において、先天性あるいは外傷や癌切除等による後天性機能・形態異常に対し、その修復を図る再建外科専門領域であります。形成外科診療では、常に各疾患に対し機能的再建と整容的改善を“車の両輪”として認識し、高いレベルでの達成を目指し、患者さんのQuality of Lifeの向上に努めていきます。

2. チーム医療・チームサージャリーの展望

 形成外科診療において、各分野の治療成績の向上や高度先進的医療の推進のために、関連する各診療科とのチーム医療は極めて重要です。これまでにも、歯学部臨床各科と共同した唇顎口蓋裂症例に対する頭蓋顎顔面外科治療、耳鼻咽喉科、消化器外科、および脳神経外科と共同した頭頚部再建外科治療、移植置換外科と共同した生体肝移植治療等、多くの分野において高度先進的なチーム医療・チームサージャリーを行い、国内外から非常に高い評価を得てきました。集学的外科治療における治療成績は、生命的予後に関する成績と Quality of Lifeの面から捉えた機能的・整容的再建に対する評価から成り立ちます。今後、機能・整容面における定量的な術後評価法を確立していくため、関連する診療科の御協力の下、各分野における術後 follow-up 外来や特殊外来の充実さらに新たに設立していくことを目指したいと考えます。

 さらに、チーム医療・チームサージャリーの福音を、より多くの患者さんに提供するためには、マイクロサージャリーを用いた微小血管吻合術および皮弁・再建外科の知識、技術そして経験を兼ね備えた優秀な再建外科医を数多く育成し、将来的には、より高度な機能的、整容的再建を目指した部位別再建外科医というエキスパートを育成するトレーニングシステムを樹立していきたいと考えています。

3. “全人的医療”、“良質で安全な医療”そして“経済効率のよい医療”の提供

 病院で働く医療従事者において、医師はタクトリーダーの役割をもち、医療人として必要とされる社会性・マネージャーシップを備えた診療姿勢を示すことが要求されます。そのためには、特に以下の項目に対して意識を高めていくように努力していきたいと考えています。

患者さんは、医療情報を得る権利、治療方法を選択する権利等を有しており、診療を行う医師はこのことを常に念頭に置き、医師の説明責任と患者さんの同意であるインフォームドコンセントの効果的な実践に重点をおき、患者さんの権利に基づいた全人的医療を提供します。

医療事故および医療過誤の発生予防のため、全ての医療従事者が個々の限界を認識し、組織としての事故防止対策と体制の整備を推進していく院内リスクマネージメント機構に積極的に参加し、良質で安全な医療の提供に努めます。

近年の医療財政の圧迫に伴う包括医療の導入や北海道大学の独立行政法人化により、経済効率の良い医療の実践に積極的に取り組んでいく姿勢が必須となっています。形成外科診療の特性を生かしてDay Surgeryセンターや保険・自由診療の混合診療導入の可能性等を見据えて、収入と支出のバランスを十分に考慮した効率の良い医療の提供に貢献します

2006年7月1日
山本有平

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