次に、顔面神経麻痺症例に対する総合的外科治療があります。新鮮例では、各種神経移植・移行術を中心とし、陳旧例では各種筋肉移植術や整容的再建術を施行し、完全・不全型の顔面神経麻痺の動的および静的再建を行ってきました。さらなる治療成績の改善のため、電気生理学的実証を含めた端側神経縫合による神経再建ならびにneural signal augmentation & double innervationを利用したnetwork型神経再建の研究を進め、さらにFunctional Electrical Stimulation技術の臨床応用も含め、顔面神経麻痺の新たな治療戦略を展開していきたいと考えています。
また、皮膚軟部組織悪性腫瘍の分野では、診断学や腫瘍外科学、抗癌薬・免疫強化薬を用いた化学療法に関する臨床研究を推し進め、北海道大学医学部・医の倫理委員会の承認を得て、皮膚悪性腫瘍におけるγ-Probe 法・色素併用法による Sentinel Lymph Node Biopsy とその臨床的意義の解明を、核医学講座と病理部の御協力をいただき推進しております。さらに、腫瘍細胞の抗癌薬感受性試験に基づいたテーラーメイド化学療法や癌ワクチン・細胞治療による腫瘍免疫療法の開発にも着手する予定です。今後、国内外の治療機関とも提携し、長期治療成績の改善および皮膚悪性腫瘍患者のより一層の QOL 向上を目指した低侵襲外科的治療法の確立に貢献していきたいと考えています。
四肢慢性リンパ浮腫の治療では、マイクロサージャリーの技術を応用したリンパ管静脈移植術を開発し臨床応用することにより、多くのリンパ浮腫の患者さんに福音をもたらすことができました。しかし、本手技には、治療成績の不安定という課題が残されており、今後は予防的リンパ再建外科や脈管再生医療の臨床応用を視野に入れ、慢性リンパ浮腫の治療に新たな方向性をもたらしていきたいと考えています。
そして、唇顎口蓋裂症例に対する頭蓋顎顔面外科治療やvascular malformationに対するレーザー治療・硬化療法の分野においても、これまでの本教室における治療成績を厳密に分析および評価し、オリジナリティー溢れる独創的な北海道大学形成外科の治療指針・アルゴリズムを構築し、世界に向けて発信していきたいと考えています。
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