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No. 4 これからの抱負と展望:教育

 私は、大学医学部教室に求められる教育・研究及び診療の3本の “矢” は密接なトライアングルを形成すると考えます。基礎及び臨床研究における“仮説の提起そして実証”さらに “対象と方法の設定そして結果に対する考察” という主体性をもった研究姿勢は指導者の教育により誕生し啓発されていきます。そして、得られた基礎及び臨床研究の成果が、高度先進的な医療として、診療の場で患者さんに提供されることが、医学の最大の目的です。そのためには、高度な医療技術のみならず、 “癒しの心” を精神的に兼ね備えた良き医師を育て、診療の場に送り出していく教育が極めて重要となります。この教育・研究及び診療の3本の “矢” は、どれか1本でも折れることは許されず、格言にもあるように、3本の “矢” が協調することで、より素晴らしい結果が得られると信じています。

 最初に、私の “教育” に関するこれからの抱負と展望について述べます。

1. 医学部学生の諸君へ

講義では、スライドとムービーを用いた印象的なコアカリキュラムを中心とし、形成外科学が扱う疾患と治療手技を中心に、医師として認知しておくべき形成外科学に対する Minimum Requirement の熟知を目指し、ならびに形成再建外科学のup to date について紹介します。

臨床実習では、講義で得た形成外科学の基礎的な知識をもとに、形成外科学のもつ臨床的意義を、実際の診療の場において直接感じ学びとることを目標とします。学生が自ら積極的に取り組む姿勢を重要とする小グループ形式の実習を行い、その成果をスライド・プレゼンテーション形式で発表し、形成的評価を基盤とします。

大学医学部の講義に形成外科学が含まれていない全国の医学生に向け、本学において行っている形成外科学講義の一部分を、本教室のホームページ上で公開し、形成外科学に対する興味と理解を深めてもらいます。

2. 研修医へ

形成外科学は「切縫に始まり、切縫に終わる」と言われるように、傷跡をきれいに治すことが強く求められる外科学です。臨床研修において、切縫、植皮、皮弁等の基本手技を確実に修得することを目指します。

早期より自分自身の診療実績を活字と画像でファイリングし、それを元に、問題提起を自己に対して課すことができ、さらに自己解決能力を備えた医師の育成を目指します。

診療姿勢に関しては、常に “Patient Oriented” な思考及び診療行為の実践に心掛けるように指導し、倫理感および豊かな人間性の育成に重点を置きます。

各形成外科手術手技の実際について、ナレーション付きDVDの形で教科書シリーズを作成し、形成外科臨床研修の一助として全国に提供していきたいと考えています。

3. 大学院生へ

大学院大学における院生の教育・指導は、極めて重要な位置を占めており、常に世界に向けて発信できる研究業績を積み重ねていくことを目標とします。そのためには、大学内外や国内外を問わず、他の研究機関との交流を活性化させることが肝要であり、特に優れた国際交流能力を備えた研究者の育成を目指します。

研究成果が臨床治療に還元することを目指した Translational Research を念頭に置いた基礎研究を推奨していくことに重点を置きます。このことは臨床外科学講座としての使命と考えています。

4. 指導医・教員へ

創造する外科学:Creative Surgery”とも称される形成外科学の精神を失わず、さらに発展させる向上心を持ち続けるように指導します。

各人が、顎顔面外科、腫瘍・再建外科、熱傷・外傷等の専門性をもち、それを高いレベルで維持していくため、国内および海外留学や学会・論文発表を励行し、教室として積極的に支援します。

研修医や大学院生を教育・指導する立場として、教育能力の開発:“Faculty Development”の必要性を強調し、対人、対地域における指導力を高めるため、指導される側からの評価制度を導入し、有効に活用したいと考えています。

5. 一般市民のみなさんへ

北海道地区において、大学医学部に形成外科学講座が設置されているのは本学だけです。私は、形成外科学の果たす役割を、道民に対してわかりやすく説明し、十分に理解していただくことは、本講座の社会に対する重要な使命の一つであると考えています。今後、市民公開講座や新聞・テレビ等の情報媒体に積極的に参加し、正しい知識・情報を一般市民に伝え、形成外科に対する社会的認知を高める啓発活動を進めていきます。

2006年1月20日
山本有平

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