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No. 36 追悼:杉原平樹先生

 北海道大学医学部形成外科学教室2代主任教授杉原平樹先生は、病気療養中のところ、令和2年12月11日(金)にご逝去されました。享年79歳でした。北海道大学医学部形成外科学教室を代表し、ここに謹んで哀悼の意を表します。

 先生は、昭和16年4月6日に北海道に生まれ、昭和38年3月に北海道大学教養部医学進学課程修了、昭和42年3月に北海道大学医学部医学科医学専攻課程卒業し、昭和47年12月北海道大学医学部助手、昭和54年10月同講師、昭和60年2月同助教授を経て、平成7年9月同教授に就任し、形成外科学講座を担当されました。その後、平成12年4月に北海道大学大学院医学研究科・医学部高次診断治療学専攻機能再生医学講座形成外科学分野に担当名が変更しましたが、退官までの9年7ケ月にわたり、本学教授として教育・研究・診療に努め、平成17年3月定年退官、同年本学より名誉教授の称号を授与されました。

 先生は、北海道大学医学部における形成外科学講座の創始メンバーです。形成外科の研修は、ニュージーランド国立ミドルモア病院および米国アラバマ州立大学病院にて形成外科の臨床ならびに基礎研究に邁進し、広く世界的視野を修得されました。診療・臨床研究においては、特に、頭蓋顎顔面外科学において、歯学部矯正科、補綴科および口腔外科と協同したチームアプローチを推進され、唇顎口蓋裂症例に対する頭蓋顎顔面外科チーム医療及び頭蓋顎顔面骨延長術の確立に努め、多大なる成果を挙げられました。さらに、悪性黒色腫に代表される皮膚・軟部悪性腫瘍に対する集学的治療に力を入れ、診断学、腫瘍外科学・再建学そして抗癌薬・免疫強化薬を用いた化学療法に関する臨床研究を行い、その治療成績の飛躍的な向上に尽力された事は特筆すべき業績です。

 基礎的な研究面においても、主な研究領域として、生体における皮膚伸展性に関する研究、血管内皮細胞に関する基礎的研究、悪性黒色腫を中心とした皮膚悪性腫瘍の増殖・転移・浸潤に関する遺伝子解析、ケロイド発生制御機構の分子生物学的解明、先天性発育不全疾患のゲノム解析、顔面膜性骨再生に関する基礎的研究などの多方面において、各関連基礎分野及び施設との共同研究を立ち上げ、形成外科学分野の臨床治療に寄与し得る基礎研究体系の確立に邁進されました。これらの研究に対し、平成15年9月には、北海道医師会賞、北海道知事賞が授与されております。

 学内にあっては、平成13年4月から北海道大学医学部附属病院副院長、引き続いて平成15年4月からは北海道大学医学部附属病院長、10月からは医学部と歯学部附属病院が統合した北海道大学医学部・歯学部附属病院長となり、さらに平成16年4月からは、その名称が変更した北海道大学病院初代院長を努め、同病院の管理・運営に大いに貢献されました。現在の北海道大学病院正面に飾られております“北海道大学病院 ”の表札は先生の直筆であります。

 学外にあっては、日本形成外科学会をはじめとして、日本頭蓋顎顔面外科学会、日本皮膚悪性腫瘍学会、日本口蓋裂学会、日本熱傷学会、日本先天異常学会等の理事・評議員を歴任されました。日本形成外科学会では理事長(平成17年〜19年)を務められました。その間、第16回日本頭蓋顎顔面外科学会学術集会(平成10年10月)、第43回日本形成外科学会総会・学術集会(平成12年5月)、第7回日本・韓国国際形成外科学会(平成16年6月)などの全国学会学術集会・国際会議を主宰し、本学における学術研究を国内外に紹介する上で多大なる尽力をされました。

 先生の長年にわたるご功績に敬意を表し、また多大なるご貢献に深く感謝し、ここに衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。

2021年1月1日
北海道大学医学部形成外科学教室 3代主任教授 山本有平

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